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東京地方裁判所 昭和52年(ワ)4599号 判決 1977年11月22日

原告 中京自動車株式会社

右代表者代表取締役 二村寛

右訴訟代理人弁護士 平井直行

右同 石附哲

被告 チェッカーキャブ協同組合

右代表者代表理事 藤原登

右訴訟代理人弁護士 和久田只隆

右同 北野昭式

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  昭和五一年一〇月二七日開催の被告の臨時総会においてなされた被告の先に総会において承認ずみの昭和四九年度、同五〇年度の決算書の内容変更の決議は無効であることを確認する。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は被告の組合員である。

2  昭和五一年一〇月二七日被告の臨時総会が開催され、被告の先に総会において承認ずみの昭和四九年度、同五〇年度の決算書の内容変更の決議がなされた。

3  右決議は被告の定款に違反した決議であり、無効である。すなわち、

(一) 被告の定款には左記の如き総会決議の規定がある。

組合員は書面又は代理人をもって議決権を行使することができる。この場合、その組合員の親族もしくは常時使用する使用人又は他の組合員でなければ代理人となることができない。

これらの者が代理人となった場合でも、代理人が代理する組合員の数は二名以内とする。

(二) しかるに、前記臨時総会決議は、総会の出席組合員が五名、委任状による出席者が二四名で、原告を除くその余の出席組合員が委任状による出席者を代理することでなされたから、右定款に違反する。

4  よって、前記総会決議が無効であることの確認を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は否認する。原告は、昭和五二年六月一日をもって被告を脱退した。

2  請求原因2の事実は認める。

3  請求原因3の(一)、(二)の事実は認めるが、その主張は争う。

理由

原告は、昭和五一年一〇月二七日開催された被告の臨時総会における決議が無効であると主張するが、その無効事由としては、単に、右決議の方法が被告の定款に定めるところの代理人による議決権行使の手続に違背していることを主張するのみであって、決議の内容に関して瑕疵があると主張しているわけではない。しかしながら、決議無効の事由たりうるのは、決議の内容に関して瑕疵がある場合であって、原告の主張する決議の方法に関する瑕疵は単に決議取消の事由となるにすぎない。(なお、原告の本訴提起は、昭和五二年五月二三日であって、中小企業等協同組合法五四条で準用する商法二四八条一項所定の決議の日より三月内という訴提起期間を徒過していることは記録上明らかであるから、本件訴を決議取消の訴に変更させる要もない。)また、原告の本訴請求は、決議無効確認請求となっているけれども、その趣旨としては、有効な決議が存在しないという意味において決議不存在確認請求をも含むものであると解しうる余地があるが、そうだとしても、原告の主張する前記決議方法に関する瑕疵は、それが延いては決議が社会通念上存在しないと評価しうる類の瑕疵とも解しがたいので、決議の不存在事由ともならない。

以上のとおり、いずれにせよ原告の本訴請求は、既に主張自体において失当であるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 岩井正子)

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